卵巣がん患者のライフスタイルよくあるお悩み

治療全体について

卵巣がんの治療にはどのようなものがありますか?

卵巣がんの治療法として手術療法、薬物療法(化学療法、分子標的治療、免疫療法)、放射線治療などがあります。

有効な治療や使用できる薬剤は、卵巣がんの分類や組織型、進行期等によって複雑に異なっています。医師はこれらを考慮して最良と考えられる治療を提案します。 治療の内容はどのようなものか、治療によって期待されることはどのようなものか、など分からないことがあれば納得できるまで何でも質問し、説明してもらいましょう。

「標準治療」をすると言われました。標準治療とはどういったものですか?

標準治療とは、科学的な根拠(適切に行われた研究や試験結果)にもとづいて効果が見込めるとされ、推奨されている治療のことを言います。

「標準」ということばの印象から、「普通の治療」「並みの治療」という印象をもつ方もいるかもしれませんが、そうではなく、一般的にもっとも良いと考えられている治療のことを言います。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 用語集「標準治療」

(https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/hyojunchiryo.html)

アストラゼネカ株式会社 がんになっても「がんの治療 標準治療とは(診療ガイドライン)」

(https://www.az-oncology.jp/cancer_treatment/gap/gap02.html)

セカンドオピニオンとはどういったものですか?

セカンドオピニオンとは、現在診療を受けている主治医とは別の病院の医師から、診断や治療選択などについてアドバイスを受けることです。

担当医の説明に不安や納得できない部分がある場合や、提示された治療以外にも選択がないかどうか知りたい場合などにセカンドオピニオンを利用することで、病気や治療への理解が深まり、より納得して治療に臨めるといったメリットが期待されます。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 診断・治療「セカンドオピニオン」

(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html)

アストラゼネカ株式会社 がんになっても「がんの治療 セカンドオピニオンの活用」

(https://www.az-oncology.jp/cancer_treatment/secondopinion/)

手術の内容

卵巣がんの手術と薬物療法はどちらを先にするのが良いのでしょうか?

通常はがんを取り除くために手術をおこない、その後、必要に応じて薬物療法をおこないますが、がんを完全に摘出できないと予想される場合などには、先に抗がん剤治療を行ってがんを小さくしてから手術を行うこともあります。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版,金原出版,2020

がんがあるのは卵巣なのに、子宮やほかの臓器も摘出すると言われました。なぜですか?

画像診断や手術時の肉眼でがんが卵巣に留まっているように見えても、微小ながん細胞が周囲の組織や臓器に広がっている可能性があります。

そこで卵巣がんの手術では、取り残しを防ぐために、両側の卵巣・卵管、子宮、おなかの臓器をおおっている大網などを取り除くのが基本となっています。がんの広がり具合によっては、骨盤内や腹部の大動脈の周りのリンパ節など、さらに多くの臓器を含める場合もあります。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療

(https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html)

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

手術で期待できること

治療は手術だけで十分なのでしょうか?

がんが早期で、かつ悪性度の低いタイプであれば治療は手術のみで十分なこともありますが、卵巣がんは進行してから発見されることも多く、その場合は、手術と薬物療法を組み合わせることが標準的です。

治療方針については主治医とご相談ください。再発の可能性もあるので、その後の経過観察も重要です。

【参考文献】

国立がん研究センター がん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療

(https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html)

手術でがんが取り切れなかったと言われました。手術は失敗したということでしょうか?

初回の手術でがんが取り切れない場合でも、その後の抗がん剤治療でがんが縮小し、寛解(がんが画像などで確認できない状態)を目指せる場合があります。

がんがおなかの中に広がっているなどの理由で、初回の手術でがんを完全に取り除けないことがあります。たとえがんを取り切れなかった場合でも、手術後に行う化学療法(抗がん剤治療)が効いて寛解となる場合もあります。また、化学療法で寛解まで至らなくてもがんが小さくなれば、再び手術を行うことでがんを完全に取り除くことができる場合があります。不安を感じたら主治医に相談しましょう。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版,金原出版,2020.

手術・手術後について

卵巣を取り除くとどのような影響がありますか?

卵巣がんの治療では、手術の際に左右両方の卵巣を摘出することが少なくありません。また、卵巣を温存しても、抗がん剤治療により卵巣の機能が低下してしまうこともあります。

卵巣の働きが低下すると、特に閉経前ではほてりや発汗、不眠、抑うつといったいわゆる更年期障害と同じような症状が現れる場合があります。

こうした症状に対しては漢方薬やホルモン補充療法などの対処方法がありますので、主治医や婦人科を専門とする医師に相談して、定期的な体のチェックと適切な対処を行うことが大切です。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療

(https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html)

薬物療法の内容

卵巣がん治療における抗がん剤治療とはどのようなものでしょうか?

卵巣がんは他のがんと比べて抗がん剤がよく効くがんで、卵巣がんの進行期や組織型などに応じて様々な抗がん剤治療が行われます。

手術のあとに、さらに抗がん剤による治療を行うと言われました。どうしてですか?

手術でがんを完全に取り切れたように見えても、肉眼や画像で確認できない微小ながんが残っていて、それが再発につながることがあります。そこで、体内に残るがん細胞を可能な限り減らし、再発を防ぐ目的で、手術の後に抗がん剤による治療を行います。

【参考文献】

国立がん研究センターがん対策情報センター,がん情報サービス再発、転移とは

(https://ganjoho.jp/public/support/saihatsu/pdf/chapter1.pdf)

手術の前に抗がん剤による治療を行うと言われました。どうしてですか?

卵巣がんの治療では、まず手術でできる限りがんを取り除くのが基本です。

しかし、がんが大きく手術で取りきれないと想定される場合や、おなかの中に広がっている場合などには、手術の前に抗がん剤による治療を行い、がんの縮小や全身状態の改善を図ってから手術による摘出を目指すことがあります。

これを術前化学療法といい、通常は数コースの治療の後、手術をおこないます。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療

(https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html)

分子標的薬を使うと言われました。どのようなお薬ですか?

分子標的薬は、がん細胞の中にある特定の物質(分子)の働きを抑えることによって、がん細胞の増殖や転移を抑える薬です。

抗がん剤と一緒に使ったり、抗がん剤治療が終わった後にがんの再発リスクを減らす「維持療法」として使ったりします。

現在、日本で卵巣がんに使える分子標的薬には、「血管新生阻害剤」や「PARP阻害剤」などがあります。

維持療法とはどのような治療でしょうか?

手術や薬物療法によってがんが縮小したり、画像検査で確認できない状態(「寛解」といいます)になっても、微小ながん細胞が残っていて、将来、再び増えはじめる可能性があります。

こうしたがんの再発や進行を防ぐために行う治療を「維持療法」と言います。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版,金原出版,2020.

コンパニオン診断とはどういったものですか?

腫瘍細胞の遺伝子検査等をおこなって、がんに対する薬の投与前にその効果や副作用を予測する検査であり、「コンパニオン診断」と言います。

保険診療で薬物療法を行う場合にはこれが必要なことがあります。患者さんにとっては、より有効な可能性が高い治療を選べる、あるいは、無駄な治療をしなくて済むメリットがあります。

【参考文献】

製薬協くすりの情報Q&A第6章くすりの役割と未来

(http://www.jpma.or.jp/medicine/med_qa/info_qa55/q47.html)

薬物療法で期待できること

薬物療法で完治しますか?

ある程度進行した卵巣がんの治療では、手術でがんを摘出した後、抗がん剤や分子標的薬による薬物療法、それらに続く維持療法を行う流れが基本です。こうした一連の治療で完治を目指せる場合もあります。

一方、進行がんや再発がんでは、治癒が困難な場合もあります。その場合、薬物療法の目的は、できるだけ良い状態を保つこととなります。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 薬物療法 もっと詳しく

(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html)

薬物療法で注意すること

薬物療法の副作用が心配です。

手術や薬物療法による副作用は個人差がとても大きく、出現するかしないか、程度が軽いか重いか、持続期間が短いか長いかなど、患者さん一人ひとりで異なります。

ここで紹介されている症状や変化、それ以外にも気になることがありましたら、主治医に相談しましょう。予防や治療(対処)についても医療スタッフから説明を受けましょう。

抗がん剤治療で髪の毛が抜けると聞きました。本当ですか?

抗がん剤は、細胞分裂が活発であるというがん細胞の特徴を標的とした薬剤です。そのため、細胞分裂の速い正常細胞もダメージを受ける場合があります。毛根の細胞は細胞分裂が活発な細胞の一つですので、治療の影響で髪の毛が抜ける副作用が出る場合があります。

脱毛を防ぐ確実な方法はありませんが、ウイッグ(かつら)や帽子などで外見の変化に備えることもできますので、
治療が始まる前に主治医や看護師に相談してみるとよいでしょう。がん患者さんへのウイッグの購入費助成を行っている自治体もあります。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 脱毛

(https://ganjoho.jp/public/support/condition/alopecia/index.html)

抗がん剤治療で白血球数が減っていると言われました。大丈夫でしょうか?

抗がん剤の投与により、骨髄の働きが抑制される、骨髄抑制という副作用が起こる場合があります。骨髄抑制によって血液中の白血球が減少すると、感染症にかかりやすくなり、時には命にかかわる状態になることもあります。

注意点についてあらかじめ医師によく確認して、抗がん剤治療中に発熱した場合などは、すみやかに主治医の指示を仰ぎましょう。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

放射線治療について

卵巣がん治療において、放射線治療は行われますか?

放射線治療は、卵巣がんが再発した場合、疼痛や出血などの症状緩和を目的に行われることがあります。また脳転移に対しては、症状緩和だけでなく、予後の改善のために行われることもあります。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療

(https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html)

経過観察について

治療が終わり、経過観察と言われました。どのようなことをしますか?

ひととおりの治療が終わったあとは、定期的に通院し、卵巣がんが再発していないか診察や検査で確認(経過観察)します。

受診時には、内診や超音波(エコー)検査のほか、腫瘍マーカーを測定する血液検査などを行います。

また、定期的にCT等の画像検査もおこないます。検診の間隔や検査内容の詳細は主治医にご確認ください。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

治療によってがんが画像上無くなったと言われました。完治ですか?

治療でがんがなくなったように見えても、画像では確認できない小さながんが残っていることがあり、再発してしまう場合があります。がんが縮小し、画像などで確認できない状態を寛解(かんかい)といいますが、がんが進行したステージⅢ・Ⅳの患者さんでは寛解状態になっても、さらにこれが長く維持されるように行う「維持療法」が重要となります。

卵巣がんの維持療法では、血管新生阻害剤やPARP阻害剤という分子標的薬が用いられます。さらに、再発や進行を発見して対処するための定期的な経過観察も大切です。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

日本婦人科腫瘍学会 編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版, 金原出版, p99-101, 2020

がんの再発が不安です。再発しないためにできることはありますか?

手術のあとに行う抗がん剤治療や、その後の分子標的薬による維持療法などが再発リスクを下げることが分かっており、こうした治療をしっかり受けることが重要とされています。しかしながら、現在のところ、再発を確実に防ぐ方法はありません。このため、がんの再発を早期に発見するための定期的な経過観察も大切です。

【参考文献】

日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版, 金原出版, 2023

臨床試験について

臨床試験で新しい治療が受けられると聞きました。臨床試験に参加できますか?

臨床試験は、新しい薬や治療法の効果や安全性について検証するために、患者さんを対象に行われる試験です。こうした臨床試験に参加することで、新しい治療を受けられる可能性がありますが、臨床試験で使われる薬剤は、効果が確定しているわけではないことに注意が必要です。また、臨床試験への参加には、さまざまな条件が定められていますので、臨床試験への参加を検討したい場合には、まず主治医に相談しましょう。

【参考文献】

国立がん研究センターがん情報サービス 研究段階の医療(臨床試験、治験など)のQ&A:基礎知識

(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct_qa01.html)

「婦人科がん.jp」を
離れます

リンク先についてのお問い合わせは、
それぞれのお問い合わせ先にご連絡ください。

ご意見ありがとう
ございました